よりぬき沿線新聞 続・湘南のお地蔵さま

続・湘南のお地蔵さま『梶原景季の身替わり地蔵』

 中島淳一

箱根湯本駅からバスに乗り元箱根港で下車。バス停横に苔むした石造物群があり、その中央の石の祠の中に梶原景季(かげすえ)の身替わり地蔵が祀られる。全体にがっしりと力強い体格をしており、腹前で定印(じょういん)を結び座っているお姿である。

この地蔵尊には次のような伝説が伝わる。「鎌倉殿の13人」にも登場する梶原景時の子景季は、ある日箱根を通りかかった時に景時と間違えられ何者かに襲われた。しかし傍らに祀られていたお地蔵さまが身替わりとなって命が助かった。それ以来この地蔵尊を梶原景季の身替わり地蔵と呼ぶようになったそうである。

そのお体には刀傷が残っているとも伝わるが、大きな赤い涎掛けのため確かめることはできない。わずかに覗える首の三道(仏像の首に見られる三本の横線)はしっかりと表現され一流の石工の作とわかる。もうひとつ不思議に思うのは、両方の手で定印という印相(仏像が持つ力を象徴する手の形)をあらわしていることで、お地蔵さまは通常この印相を結ぶことはない。しかしこれも深々と被った赤い帽子のためにその特徴である剃髪した頭の様子はわからない。

様々なミステリーを生む地蔵尊ゆえに、古来より人々の心を魅了し続けているのであろう。

-よりぬき沿線新聞, 続・湘南のお地蔵さま