鎌倉殿がもっと楽しくなる!リレーコラム⑤『NO WAR!』
大江昭子(鎌倉国宝館 学芸員)
江戸っ子が親しんだ『平家物語』の巻十一には、壇ノ浦の戦いで、兵士だけでなく非戦闘員の船頭まで殺され、子女も入水する、平家滅亡の凄惨な様子が語られている。
一方、勝軍の義経の方も、頼朝の許可なく後白河法皇から検非違使の称を受けたことや、独善的ふるまいで怒りを買い、義経追討の院宣が出される。京を追われ、一一八八年十一月、大物浦(現在の尼崎市)から九州へ逃亡しようとする。しかし、壇ノ浦で落命した平家の怨霊に阻まれ叶わなかったと言うのが、大谷美術館所蔵の「文治四年源義経摂州大物浦難風之図」。暴風雨、逆巻く波間におどろおどろしい形相の怨霊、数珠を握り調伏の祈祷をする弁慶が描かれる。
猛き者も遂には滅びぬ。今起きている戦乱が一秒でも早く終息すること、歴史に学び轍を踏まないことを、強く強く祈念する。