続・湘南のお地蔵さま『坂上厄除地蔵』
中島淳一
鶴間駅東口からバスで五分程の諏訪神社で下車。少し戻って右折し突き当りを右へ行くと鮮やかな朱色の小さなお堂があり、坂上厄除地蔵が祀られる。
お顔の後ろに光背を付け、お体から下は赤い涎掛けなどで覆われているが、石柱の上に座すお姿のようである。造立は江戸時代の明和元年(一七六四)でお顔や光背は長年の風雨により傷みが激しいが、道標の役目も果たしていたようである。
このお地蔵さまの右前を通る道は江戸時代に東海道の脇街道であった矢倉沢往還(大山街道)で、下鶴間は宿場であった。また宿内を滝山街道も通っており、当時の主要道が東西南北に交差し宿場は栄えていたようだ。地蔵尊近くの旅籠屋「まんじゅうや(角屋)」には、蘭学者で画家としても有名な渡辺崋山も一泊している。
このお地蔵さまの名前だが、街道を東から宿場に入りその中心地から西へ向かう道が上り坂で、上り切った場所の地名が今でも「坂上」と言い、また地域の厄払いの願いも込めての名前だろうか。
このお堂には「しめ縄」が張られていた。あまり目にしない光景なので不思議に思ったが、昔は災厄を近づけないためにしめ縄を道に張ったと聞いたことがある。きっとお地蔵さまがこの地域に災厄が入らぬよう守っているのであろう。