コラム・その他 私の江ノ電ばなし

私の江ノ電ばなし 第一話 飛ばされた帽子

野口雅章 写真集『江ノ電305』著者

冷房化される前の304号。2005年まで活躍した。(1990年12月 湘南海岸公園 撮影筆者)

いつものように買い物を終え、江ノ電藤沢駅へ戻る。帰りはどの電車が来るのか。これも楽しみの一つだ。おや、やって来たのは何と三〇四号だ。おかしいな、この電車は十年以上前に廃車されたのに……。と思ったら、眼が覚めた。また、江ノ電ネタの夢を見てしまった! 笑われるだろうが、江ノ電大好きの私は本当にこんな夢を見てしまう。

さて、今回の夢の「主役」三〇四号には、他の車両にはない思い出がある。小学生の頃、母親と一緒に藤沢へ行った帰りのこと。当時から電車好きの私は、運転室のすぐ後ろに陣取った。その頃、まだ電車に冷房などない。運転室の仕切りは簡単なもので、電車が走り出すと、ものすごい風。あっと思う間もなく、私の帽子は窓から飛ばされてしまった。三〇四号(他に三〇五号)は、運転室と扉の間の席のないスペースにも窓があったのでこんなことになった。ちなみに、今も残る三〇五号のこの部分の窓は、冷房化の後開かないようにされている。

夢に出た三〇四号は、1931(昭和6)年製造のタンコロ一〇六、一〇九号を二両連接車に改造したものだ。したがって、タンコロまつりで展示される一〇八号とは兄弟車ということになる。

奇しくも、昨年はタンコロ誕生90周年だった。コロナ禍で、二年連続「タンコロまつり」は中止された。今年こそ開催されると嬉しい。

冒頭のような夢を見たのも、タンコロ90周年と、何かの因縁があったのかもしれない。

-コラム・その他, 私の江ノ電ばなし