よりぬき沿線新聞 続・湘南のお地蔵さま

続・湘南のお地蔵さま『禅作地蔵』

 中島淳一

藤沢本町駅近くの白旗交差点を藤沢橋方面へ二百メートル程進むと宿場町の面影を残す古い蔵があり、その横の細い道の正面に真言宗荘厳(しょうごん)寺がある。創建は平安時代末まで遡る古刹で、現在の地には明治時代の初めに移転したと伝わる。

本堂には本尊不動三尊や大日如来、弘法大師など密教寺院特有の尊像が祀られ、森厳な雰囲気がただよう。

そんな中で一体のお地蔵さまが親しみ深く私たちを迎えてくれる。「禅作地蔵」と呼ばれるこの像は像高六十一センチ、円光背を付け、右手に錫杖左手に宝珠を持ち、黒漆色の仏衣をまとう。衣文の流れも美しく均整の取れたお姿である。

胎内より発見された銘札により、江戸時代の元禄三年(一六九〇)に地元の有力者の妻を施主として、鎌倉を活動の場とした仏師三橋左京重信が造立したことが分かった。この仏師は北鎌倉円応寺の十王のうち数体を造立したことが知られる。

禅作地蔵という名前の由来は定かではない。しかしこのお地蔵さまのやさしいまなざしのように、人々に愛されつつ亡くなった故人の菩提を弔うために愛情をもって付けられた名前なのだろうか。

これからもこの名が示す如く、歴史あるこの町に禅(善)を生み出し明るい未来を作っていってほしいと手を合わせた。(参拝には事前の連絡が必要)

-よりぬき沿線新聞, 続・湘南のお地蔵さま