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鎌倉殿がもっと楽しくなる!リレーコラム⑩鎌倉殿と稲瀬川

三浦浩樹(鎌倉長谷寺 学芸員)

 歌舞伎「白浪五人男」で主人公たちが勢ぞろいする場所として著名となった稲瀬川。しかし、奈良時代に成立した『万葉集』の歌中に見出されるほど川の歴史は古い。

『吾妻鏡』によると、源頼朝が鎌倉入りを果たした治承四年(一一八〇)、その知らせを受けた北条政子は急ぎ鎌倉に向かったが、稲瀬川まで来たところ日柄ひがらが悪かったため、川辺の民家に逗留し日をたがえてから鎌倉に入ったという。また、元暦元年(一一八四)には、平家討伐のために弟の源範頼を鎌倉から送り出す際、頼朝は稲瀬川辺に桟敷を設け見送ったことが知られる。

現在の川の姿からは想像もできないが、頼朝が鎌倉を治めはじめた頃の稲瀬川ではこの他にも数々のドラマが生み出されたようである。やがて、名君と謳われた北条泰時(北条義時の息子)が執権を務めた頃、川の源流辺りには鎌倉大仏が建立されたのであった。

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