えのぶーん コラム・その他

【いろんな人のぶんを読む。】えのぶーん『ウルトラマンの「いざ鎌倉」』

吉田 克彦(江ノ電沿線新聞会長

先日、突然ウルトラマンティガが江ノ電沿線に出現しました。と申しますのはテレビの番組で江ノ電沿線を舞台に宇宙怪獣とウルトラマンティガが格闘したというお話です。

このドラマでは腰越の路面電車通りにある星野写真館のご主人にガッツ石松さんが扮しています。このご主人は大の江ノ電好きで日頃から江ノ電の写真を撮りまくっているプロのカメラマンです。そんなある日、海辺で江ノ電を撮影しているとき、海に怪獣がいるのを見掛けます。ところが怪獣が現れるのはフイルムを交換しているときだったり、車が遮っている間に見えなくなっていたりでプロのカメラマンも証拠の写真が撮れず、レーダーにもセンサーにも感じないので何かの錯覚だろうとみんなに嘲笑される始末です。写真館の息子は学校でいじめに遭います。

そこで親子の必死の怪獣探索が始まるのですが、どうやらこの怪獣は江ノ電の警笛が聞こえると現れるらしいということが分かり、極楽寺の車庫で江ノ電の警笛をガンガン鳴らすと、果たせるかな怪獣が出現します。これを迎え撃ってウルトラマンティガが奮戦するという筋立てです。極楽寺の本堂とおぼしき建物あたりを舞台に怪獣と格闘するシーンは実に圧巻でありました。

ところで、この怪獣のお母さんらしい宇宙怪獣についての情報が入り、その鳴き声が江ノ電の警笛によく似ていることが判明。つまり、この怪獣はお母さん恋しさに江ノ電の警笛が鳴ると姿を見せていたらしいというのです。江ノ電極楽寺車庫の助役さんは何と気前よく江ノ電の電車を一台あげると申し出ます。ウルトラマンティガは貰った江ノ電の警笛を鳴らしながら怪獣を連れて地球を飛び出し宇宙怪獣の母親の所へと急ぎます。ドラマは怪獣親子の感激の対面でフィナーレ。

さてこれでドラマはめでたく終りとなりましても、なぜ江ノ電の警笛が宇宙怪獣の母親の鳴き声とそっくりだったのかは疑問が残ります。江ノ電の警笛から宇宙怪獣の声を連想するのは凄い想像力だなとは思うのですが、これなくしてこのドラマは全く成り立ちません。しかし調べてみますと江ノ電の警笛装置は江ノ電だけの特製ではなく、江ノ電にはタイフォンや電子フォンの汎用品が用いられているのですから、このドラマはあちこちの電鉄でも成り立つ筈ということになります。それが江ノ電とその沿線でこのドラマが展開していってちっとも違和感のないところに、きっと江ノ電の醸し出すのどかな雰囲気があるのだなと思い至るのです。(97年10月)【吉田克彦 著「湘南讃歌より】

-えのぶーん, コラム・その他