コラム・その他 私の江ノ電ばなし

私の江ノ電ばなし 第十一話 続・文学の中の江ノ電

野口雅章 写真集『江ノ電305』著者

江ノ電が描かれた本のホンの一部(筆者所蔵・撮影)

今月は、十月号の続編。文学に描かれた江ノ電・現代作品編を述べてみたい。

まず取り上げるのは、長く鎌倉在住だった詩人の田村隆一だ。彼は「夜の江ノ電」という詩を残している。

「午後九時ごろ
 江ノ電に乗ってごらん
 はじめは混んでいるが石上
 柳小路それから
 腰越の小さな漁村にさしかかると
 まったく無人になる」

現在は、「まったく無人」にまではならないと思うが、今読んでも、夜の江ノ電の雰囲気をよく伝えている詩だと思う。

夏目漱石などの批評で知られた江藤淳は、「帰る場所」というエッセイの中で、次のように書きとめている。

「稲村ヶ崎で擦違った電車の前二輌は、爽やかなライトブルーに塗られていて、白い塗料でPOCARI SWEATのマークがはいっており、何処となく戦前の納涼電車の雰囲気を漂わせていた。」

派手な広告電車は、やはり納涼電車を連想させるようだ。

この他にも、柚木麻子「本屋さんのダイアナ」、佐藤多佳子「黄色い目の魚」など、挙げればきりがない。ミステリーでは、西村京太郎「鎌倉江ノ電殺人事件」がある。江ノ電は文学の世界でも大人気! と分かっていただければ幸いだ。※この記事は江ノ電沿線新聞2022年11月号に掲載されたものです。

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