続・湘南のお地蔵さま『牛ヶ谷戸の子守地蔵』
中島淳一
逗子駅よりバスに乗り葉山小学校で下車。少し戻り信号を右折すると牛ケ谷戸の地蔵堂があり、堂内にはお地蔵さまを中心に数体の石造物が祀られる。この地名の由来は牛の力を借りなければ耕せない程に固い土質の田が多かったためと伝わる。
牛ヶ谷戸の子守地蔵は三体の地蔵尊の総称で、中央の道標を兼ねた地蔵菩薩塔は町の指定文化財である。江戸時代の天保二年(一八三一)に建立され、先の尖った角柱上部に合掌して蓮台に座る地蔵尊を浮彫し、その下に「右うら賀」「左やま道」と刻む。現在の葉山町周辺には鎌倉などから三崎や浦賀に向かう街道が通っていた。
その他に元文二年(一七三七)建立の同じく道標を兼ねた地蔵菩薩塔(下半分欠)と、昭和十一年(一九三六)建立の丸彫りの坐像で構成され、地域の子どもたちをタッグを組んで守っている。
地蔵堂のすぐ隣に小児科の医院があるが、感染予防のために待合室に入れず、親に抱かれた幼い子どもたちが車の中で、辛そうにじっと順番を待っていた。永い間子どもたちを守ってきたお地蔵さまも「新型コロナ」という異国伝来の病気には、ほとほと困り果てているようである。