コラム・その他 私の江ノ電ばなし

私の江ノ電ばなし 第五話 旧500形への思い

野口雅章 写真集『江ノ電305』著者

丸みをおびたモダンなスタイルだった502+552(1973年6月 筆者撮影)

いよいよ五月晴れの季節。曇りや雨も風情があるが、何と言っても気分が良いのは、この季節ではないか。思わず、江ノ電に乗ってどこか出かけたくなる。冷房が無かった頃は、電車の窓を開け、さわやかな季節を感じることができた。

その頃の江ノ電の代表車両が、旧五〇〇形だ。今も五〇〇形という電車があるが、今回取り上げるのは昔の五〇〇形。旧五〇〇形は二編成あった。まず、五〇一+五五一が1956(昭和31)年に登場。翌年、五〇二+五五二が登場した。

この車両の特色は、その車体スタイルにあった。前面は、流線形と言っても過言ではない丸みをおびており、左右の窓に曲面ガラスが使われた。

客用扉も、当時としては珍しい両開き式。車内は、車両中央部にクロスシート(対面式座席)があり、とてもモダンな電車だったと言えよう。

二編成とも、基本スタイルは同じだったが、五〇二編成は、前面に特色があった。窓上のヘッドライトが角型で、その両脇にタイフォン(警笛)を付けるという凝ったデザインだったのだ。

ヘッドライトは普通丸型で、角型にするというのは、とてもユニーク。こういうデザインを、昭和30年代始めに考えたとは、今考えても脱帽というほかない。

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