私の江ノ電ばなし 第七話 併用軌道の夏祭り
野口雅章 写真集『江ノ電305』著者
もうすぐ夏本番。湘南にも、キラキラした夏がやって来る。さまざまなイベントや楽しみがあるが、何と言っても、心躍らされる行事の一つが夏祭りだろう。
江ノ電沿線には、いろいろな祭りが行われる。伝統ある寺社の祭礼、また近年では、江の島でのライトアップなども有名だ。数ある行事の中で、特に夏が来たと感じさせるのは、毎年七月に開催される併用軌道の夏祭りではないだろうか。
併用軌道とは、電車が車と共に道路を走る区間のことで、江ノ電には七里ヶ浜駅付近など四箇所が存在する。その中で、誰が見てもハッキリと併用軌道と認識できるのが、江ノ島~腰越間だ。
この区間では、毎年七月第二日曜(元々は七月十四日)に、祭礼が行われる。この時は、江の島八坂神社と腰越小動神社のみこしが繰り出し、江ノ電と〝共演〟する。ちょっとびっくりするのは、1961(昭和36)年頃までは、この区間の架線を取り外し、江ノ島と腰越で、それぞれ折り返し運転をしていたということだ。これは山車の高さを考慮して行われていたらしい。
近年はさすがに架線取り外しはないが、祭り当日午後の一部時間帯で、電車が運休となる。ただし、この区間だけでなく、江ノ島~稲村ヶ崎まで運休されるのは残念なところ。昔のように、腰越折り返しにしてもらえれば便利なのだが。(ちょっと無理かなあ……。)※この記事は江ノ電沿線新聞2022年7月号に掲載されたものです。
(参考文献)
飛田康行『江ノ電むかしがたり』(1976年)