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神奈川どうぶつ図鑑『鎌倉のアメリカザリガニ』

野生・動物園・動物カフェなどなど
自然豊かな神奈川にはどうぶつ達がたくさんいます。

動物を観察することは癒されるだけでなく、学べることがたくさんあります。
神奈川で出会えるどうぶつ達の生態・生活をのぞいてみましょう。

今回のどうぶつは『鎌倉のアメリカザリガニ』です。

少年時代、ザリガニ釣りをした思い出がある方は多いのではないでしょうか。
アメリカザリガニは全国で見る事が出来るどうぶつですが、実は日本のアメリカザリガニの歴史は鎌倉から始まるのです!

今回は江ノ電沿線新聞で昭和61年・62年にアメリカザリガニの渡来について迫った記事から、日本におけるアメリカザリガニのオリジンストーリーをお届けします。

江ノ電沿線新聞のザリガニ記事

アメリカザリガニが日本にやって来た理由

いま本州から四国・九州にまで広く生息するアメリカザリガニは、そのころ輸出用に飼育していたウシガエルの飼料として移植したことに始まる。

北米に広く分布するウシガエルは、渡瀬庄三郎東京帝大教授が渡米中にカエル料理を賞味し、これは産業として成り立ちうると、帰国後に取り寄せたことによる。これを、大正7年5月18日、東京・芝の伝染病研究所(現東大医科研)の池に十七尾を放った。後に第八高等学校教授・名古屋大学教授となった河野卯三郎助手らが、これの増殖に取り組んだ。

やがて、カエルが増えるにつれ池が狭くなったので、大正10年(1921)の秋、河野助手は神奈川県鎌倉群小坂村岩瀬に養蛙池(現岩瀬下関青少年広場)を設け、これを鎌倉養殖場とよんだ。このときさらに、ニューオリンズから十二つがいのカエルを輸入して池に入れた(河野卯三郎、1921)。

たまたま渡米中の、河野助手の兄、芳之助さんが、ザリガニが「食用ガエルのえさ」によいことを知り、昭和5年(1930)6月、ルイジアナ州ニューオリンズから輸入し、弟の鎌倉養殖場に20尾を放ったのが、わが国へ渡来の始めである。

昭和61年(1986年)江ノ電沿線新聞『ニューオリンズから来た珍客 ザリガニの古里は鎌倉 酒向昇』

とあり、アメリカザリガニが日本にやって来たのはウシガエルのえさ用としてだったことがわかります。
しかし、渡来の詳細については諸説あり、はっきりしていませんでした。1年後の江ノ電沿線新聞でザリガニ研究の続報が掲載され、正確な情報が判明します。

アメリカザリガニの渡来とザリガニの日

……大正9年に神奈川県鎌倉群小坂村岩瀬に河野卯三郎の長兄・芳之助が民間初の「鎌倉食用蛙養殖場」を開設した。

……卯三郎が鎌倉養殖場を経営したのではなく、兄・芳之助の蛙養殖事業の協力者であったにすぎない。これまでの説のごとく卯三郎が養殖場を経営したとするのは正確ではない。

昭和62年(1987年) 江ノ電沿線新聞 『解明されたザリガニの渡来日!五月十二日を「ザリガニの日」に 酒向昇』

養殖場の経営について誤りがあったことがわかると、河野芳之助さんの資料の調査がすすめられ、ついに渡来の真相が明らかになります。

……アルバムの渡米記録によれば、芳之助の横浜発は昭和2年3月某日の春洋丸であり、3月12日には日付変更線を超えている。アルバムには商用のため各地に行った風物、さらに、蛙の生息する沼沢や取引相手のパーシー・バイオスカの写真もある。その最後に注目すべき一枚があった。この写真には「昭和2年5月12日横浜港へ入港の大洋丸」と添書きされている。

この時のことを、弟の河野卯三郎遺稿集「我輩はお魚である」の一節には、次のように記している。

『当時米国に居た私の愚兄(芳之助)が、日本に帰るとき生きたブルフロッグと、その餌であるアメリカザリガニを、ビアダル一杯持参し、大船の田園都市の近くに水田を改造して養蛙池を造り、蛙をザリガニと共に放養した所が、そのザリガニが野生になって大船一帯に繁殖したのが、アメリカザリガニが日本に渡来した始めである。…』

昭和62年(1987年) 江ノ電沿線新聞 『解明されたザリガニの渡来日!五月十二日を「ザリガニの日」に 酒向昇』

以上の研究により、アメリカザリガニの渡来日は昭和2年(1927)5月12日と判明し、現在もザリガニの日として定着しています。

アメリカザリガニの現在いま

2020年11月2日にアメリカザリガニを除く、外来ザリガニが特定外来生物に指定され、飼育、運搬、販売・譲渡、野外に放つことが外来生物法により、規制されました。アメリカザリガニは飼育されている個体が多いため、特定外来生物に指定をすることにより、混乱を招きかねないことから、外来ザリガニの中で唯一未指定となりました。

しかし、アメリカザリガニは生態系に大きな影響を及ぼすことが指摘されており、「緊急対策外来種」に選定されています。今後、アメリカザリガニの規制が強まる可能性もあるので、外来種被害予防三原則(入れない、捨てない、拡げない)を守って、かしこく付き合っていく必要があります。

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