コラム・その他 私の江ノ電ばなし

私の江ノ電ばなし 第三話 踏切いまむかし

野口雅章 写真集『江ノ電305』著者

筆者が小学生だった頃の極楽寺三号踏切(1971年8月 筆者撮影)

小学校四年生くらいのことだった。いつものように、江ノ電の運転室すぐ後ろに乗り、前方を見ていた。電車は長谷駅を出て、鎌倉へと向かうところ。由比ヶ浜駅手前のS字カーブ手前にある踏切を、電車が通過しようとした瞬間のことだ。直前を男性が乗ったバイクが、猛スピードで通ったのだ。これにはびっくり仰天した。電車の運転士さんも、さすがに驚いたとみえて、思わず席から立ち上がったのを覚えている。

また、極楽寺~長谷間にある極楽寺三号踏切では、別の体験があった。見通しの悪い山側から、この踏切を渡ろうとした私は、夕方近いのに、一両の一〇〇形が通ったので、珍しいなあと思いながら見送った。それでは渡ろうかと、ひょっと右手を見ると、すぐ近くにもう一両の電車が迫っている! あわてて戻ったのは、言うまでもない。この時は、一〇〇形同士の続行運転だったのだ。

踏切の警報機や遮断機が完備された今では、こんな体験は考えられない。とても見やすい全方向型の警報機も増え、安全性は飛躍的に向上している。さらに近年は、非常停止ボタンも普及し、より一層充実している。

安全面と共に、場所によっては、遮断機が降りたあと、警報機の音が少し小さくなるという心遣いが感じられる装置もある。まさに至れり尽くせり、といったところか。これほど設備が充実すると、あの素朴な昔の踏切がちょっと懐かしく思われる今日この頃だ。

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